フェアトレードと聞くと、コーヒーや衣料品を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。フェアトレードとは、コーヒー豆の生産者に正当な報酬を支払い生活を保障するために、先進国が継続的に適正な価格でコーヒー豆を買い取るという取引方法ですね。私もこれを思い浮かべたのですが、実は音楽家のフェアトレードというのもあるそうです。
一般的に、どのジャンルの音楽であっても、演奏活動を始めようとした時に簡単に仕事が見つかるわけではなく、知り合いを通じて演奏機会を得たとしても報酬はほんのわずかである、という話は珍しくありません。そもそも演奏機会があるだけでも嬉しいという感覚で、報酬は二の次になってしまうのは、演奏者の意識の中にもあるでしょう。しかし、それでは1回きりの演奏で終わってしまい、持続はできません。聴衆が正当な報酬を支払い、仲介者も適正な報酬額を理解し、演奏者も自分の適正な報酬額を知っておく必要があるのです。
音楽創作者のフェアトレード
音楽著作権協会のホームページには、音楽創作者の権利を守るために活動している団体が紹介されています。その中で、CIAM (International Council of Music Authors)という1996年に設立された団体で、音楽創作者の国際評議会です。ここでは、「FAIR TRADE MUSIC」と呼ばれる取り組みをしています。
音楽創作者自らが透明性や公正な報酬の基準を確立し、基準に適合する透明性があり、報酬を公正に支払うアルバムやシングルに対し認証を与えることを目的としています。今後、認証対象はレコードレーベルや音楽配信サービス等にも拡大される予定です。(この取組みは世界中で広がるフェアトレード運動を参考にしています。)
音楽著作権協会ホームページより
文章を読む限り、CIAMの対象は音楽創作者であって、演奏者は入っていないようです。もっとも、演奏家がCDやDVDを発売することになれば関わってきますが、日常の演奏活動は入っていないでしょう。
邦楽のフェアトレードは?
邦楽においても事情は同じで、演奏家にとって演奏機会が限られていることに関しては、クラシックの音楽家よりも厳しい状況ではないかと思います。
日本芸能実演家団体協議会による「伝統芸能の担い手の収入源」という統計では、ジャンルによって違いはありますが、2000年のデータでは、舞台・コンサート出演が9割以上の収入源となっているのは歌舞伎のみで、三曲はたった2.6パーセント、日本舞踊も6.6パーセント、長唄が2割、能楽が3割といった状況です。
2014年のデータもあるので比べてみると、舞台やコンサートの収入は、邦楽が13.2パーセント、伝統演劇が43.6パーセント、邦舞が6.7パーセントとなっており、ジャンル分けが変更されているので分かりにくいですが、おおむね2000年と同じ状況と思われます。
*この統計は、東京音楽大学による「日本とアジアの伝統音楽・芸能のためのアートマネジメントハンドブック」22ページに掲載されています。
まとめ
音楽大学を卒業したりプライベートで長く修業して、やっと一人前の演奏家として歩き出そうとした時に、生活が立ち行かず、夢を断念する人がとても多いと感じています。演奏機会を増やし、その報酬を適正にすることは、とても大切です。音楽のフェアトレードの心が多くの人たちに広がってほしいと思います。



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