日本音楽の通史の現代までの流れを知ることができる入門書『ものがたり日本音楽史』を紹介します。
『ものがたり日本音楽史』は、音楽学者の徳丸吉彦氏によるもので、岩波書店より、岩波ジュニア新書の一冊として2019年に刊行されました。目次は下記のとおりですが、文字を持たない先史時代から21世紀まで、伝統音楽の変遷をたどることができます。あくまでも個人的な意見ですが、他の通史には見られないと思った特色を書き出してみます。
第一章 古代では、縄文時代や弥生時代のような先史時代の楽器の他、雅楽だけでなく仏教音楽にも重きが置かれています。
第二章 中世の前半では、この時代の特徴を網羅的に考察しています。この時代に成立した音楽種目としては平家琵琶と能楽が注目されますが、ここでは、その他の音楽も含めた中世の音楽世界を想像することができます。
第三章 近世では、三味線音楽が中心になりますが、琉球とアイヌの音楽を特別に扱っており、単に音楽を紹介するにとどまらず、歴史的な変化をたどっています。
第四章 近代では、明治維新後の激動の時代における動向を音楽種目別に丁寧に描かれています。それまでの伝統音楽が質的に大きく変化した要因と変化の状況を詳しく知ることができます。
第五章 現代では、音楽種目別に戦後の変化が述べられ、2000年代の伝統音楽までその動向のそれぞれの意味付けがなされています。
巻末には索引が設けられており、とても便利です。伝統音楽に興味を持ったら、ぜひ手に取って読んでほしい一冊です。
全体として、最新の研究成果を盛り込んだ内容になっており、具体的な事例が詳しく述べられているので、日本音楽の豆知識としても面白く読めるでしょう。
ただし、盛りだくさんなので、全部をしっかり理解しようとした時には、本書だけでは不十分かもしれません。本書は導入として活用し、一つ一つを深掘りしたい人は、より詳しい専門書を当たってみると良いと思います。
https://honto.jp/netstore/pd-contents_0629988205.html
- 第一章 古代
- (一)音楽の定義/(二)楽器の定義と縄文時代の楽器/(三)弥生時代の楽器/(四)倭国の対外関係と音楽/(五)文字・儒教の導入と音楽/(六)仏教の導入と音楽/(七)音楽伝承の制度化/(八)大仏建立と音楽/(九)鐘の響き/(一〇)東大寺の修二会/(一一)音高についての古代の理論/(一二)声明/(一三)奈良から京都へ−平安時代の始まり/(一四)平安時代の音楽のあり方/(一五)雅楽の楽器と合奏/(一六)雅楽での音高と時間の合わせ方/(一七)中央と地方の文化的な交流と歌の役割
- 第二章 中世
- (一)中世という時代/(二)中世に共通する特徴/(三)中世に盛んになった歌/(四)日本最初の語り物−平家/(五)日本最初の楽劇−能楽
- 第三章 近世
- (一)近世という時代/(二)琉球の音楽/(三)アイヌ音楽/(四)日本本土の音楽に共通する特徴/(五)近世の楽器としての三味線/(六)箏曲・胡弓・尺八/(七)歌舞伎における囃子/(八)七弦琴・一弦琴・二弦琴/(九)近世での外国音楽への関心
- 第四章 近代
- (一)明治時代の文明開化/(二)教育における文明開化/(三)神道の役割強化と音楽の利用/(四)神道のための雅楽の重視/(五)社会変革を乗り越えた能楽/(六)解体された当道座と普化宗/(七)文明開化のための西洋音楽の導入/(八)近代の日本音楽の状況/(九)近代における三曲界と文化触変/(一〇)日本音楽の新しい記譜法/(一一)近代末期の状況
- 第五章 現代
- (一)敗戦国日本と音楽/(二)民謡と民俗芸能/(三)戦後の伝統音楽/(四)伝統音楽における文化触変/(五)音楽の活性化と公的組織/(六)これからの日本音楽の状況
- あとがき
- 索引(事項索引、人名索引、曲名・旋律型索引)
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